規模の小さなベンチャー会社は、知名度の低さから人材確保も簡単ではありません。
将来性のありそうな魅力的な事業なら有能な人材も集まりやすいですが、大企業に比べたら一筋縄ではいかないでしょう。
優秀な人材を確保できればできるほど事業もスムーズに展開できるので、求人を出す際には応募したくなるような条件をつけるのが一般的です。
ストックオプションとは
そこで現在は小さな会社でも将来大きく成長しそうなベンチャー企業を中心に、増えているのがストックオプションです。
ストックオプションとは、自社株を株式会社の従業員や取締役があらかじめ決められた価格で取得できる権利です。
現在は株価が安くても、事業が成功すれば株価は何十倍にも膨れ上がります。
株価が上昇してから自社株を購入しても、得られる利益はわずかでしょう。
しかし従業員や取締役だけにあらかじめ決めた金額で株価を取得できる権利を与えていれば、株価が値上がりしたときに売却して大きな利益を得られます。
つまりあらかじめ決めていた金額、権利行使価格と時価の差額が従業員や取締役の利益になるわけです。
権利を付与された従業員や取締役にとっては、インセンティブにもなるので人材確保に効果的とされています。
元々はアメリカで始まった制度ですが、1997年5月に商法が改正され日本でも開始されました。
ストックオプションの導入に向いている企業
ストックオプションの導入に向いている企業は、株式上場を目指すベンチャー企業やすでに上場している企業です。
実際の導入例でも、IT系のベンチャー企業が多くなっています。
その一方、向いていないのはすでに成熟している企業です。
一定の実績を残している企業の株価は、今後大きく値上がりする可能性は低いです。
長期的に値上がりしても短期的には株価に大きな変化は起こりづらいので、制度を導入するメリットは薄くなるでしょう。
もちろん将来性のあるベンチャー企業でも、事業が失敗して上場を果たせなかったり株価が下がるケースはあります。
しかし株価が下がっていてるときは権利を行使しなければ損はないので、悪影響は限定されるでしょう。
ベンチャー企業が株式上場を果たせば株価が何十倍、何百倍に膨れ上がるケースは多々あるので権利の価値は高まります。
大きなインセンティブを手にできる可能性があるので、ベンチャーなど将来性のある企業ほど向いている制度と言えるでしょう。
ストックオプションの制度を利用するメリット
将来性豊かな企業がストックオプションの制度を利用するメリットは、人材確保で有利になる点です。
優秀な人材はいくつもの企業から好条件で声がかかるので、資金力が乏しい小さな会社では声をかけづらくなります。
しかし将来大きなインセンティブを受け取れる可能性があるなら、入社してくれる可能性は高まるでしょう。
優秀な人材を獲得するためだけではなく、離職を防ぐのにも役立つ制度です。
大きなインセンティブを得られる権利を持っているのに、それを行使する前に退職する人はいないでしょう。
基本的には十分なインセンティブを得られるまで働き、株価が上がったところで権利を行使してから退職します。
つまり企業がある程度成長するまでは勤めてくれる可能性が高まるので、人材の流出も防ぐことになります。
ある程度成長すればもし退職されてしまっても、新たな優秀な人材の確保は以前ほど難しくありません。
権利を持っている従業員や取締役のモチベーションが上がる
獲得するときのメリットばかり考えてしまいがちですが、離職を防げるのも大きなメリットです。
権利を持っている従業員や取締役のモチベーションが上がるのも、メリットの一つです。
仕事を頑張り会社を成長させればさせるほど自分が得られる利益も大きくなるので、働く従業員や取締役のモチベーションがアップしていきます。
権利を付与されている従業員や取締役は企業価値を上げるという共通した目標もできるので、意識も統一しやすくなるでしょう。
働く従業員や取締役が共通の目標を持ちモチベーションも上がれば、企業にとってもプラスに作用します。
権利を持っている従業員や取締役に、株式投資ならではのデメリットがないのもメリットです。
一般的な自己資金で株式投資をした場合、購入時より株価が下がれば損失を被ります。
しかしストックオプションは、自己資金で株を取得するタイミングを決められた範囲で自由にできるので、もし株価が下がったら権利を行使する必要はありません。
権利行使価格より下がっているときは権利を使わない、株価が回復したら権利を使って売却し利益を得るという流れになるので、一般的な株式投資にあるリスクがないと言えるでしょう。
まとめ
このようにストックオプションには権利を付与する企業、受け取る従業員や取締役の双方にメリットがあります。
しかしデメリットも当然ながらあり、たとえば業績が悪化したときはモチベーションが上がったり、権利を持っていない従業員との間で不公平感が広がる可能性もあります。
優秀な人材を確保するための制度として導入するなら、それらのデメリットの影響も考えておかなければなりません。
最終更新日 2025年3月21日 by tinasdelamp
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