林田学さんも言及している給与計算の重要性とは?
私は、社会保険労務士業を生業としています。
したがって、普段から業務上給与事務(直接計算する場合と給与明細をチェックする場合があります)に携わっています。
いわば、給与計算のプロといって良いかと思います。
しかし、プロの私にとっても給与計算は簡単なものではありません。
給与計算には、労働基準法、税法、社会保障関連の法律の知識が必要なのはもちろん、他にも注意しなくてはならないことが数多くあるからです。
知人の林田学も給与計算は難しいと言っています。
では、給与計算を正しく行うためには、どうすれば良いでしょうか。
私が普段必要だと感じている三つの要素を挙げてみます。
第一の要素は、社員情報をしっかり把握することです。
労働日数や時間数はもちろんのこと、年齢(生年月日)、被扶養者の人数、社会保険(健康保険および厚生年金)の等級などが把握できていないと、正しい給与額は導き出せません。
例えば、社員が40歳になると、介護保険料を徴収しなければなりません。
社員が65歳になれば、雇用保険料の徴収が必要なくなります。
社員の子供が就職したら、被扶養者の人数を減らさなければなりません。といった具合です。
第二の要素は、年間スケジュールを把握しておくことです。
1月には所得税の源泉徴収税額表が変更されます。
3月には健康保険料率および介護保険料率が変更されます。
4月には雇用保険料率が変更されます。
6月には住民税特別徴収額が変更になります。
9月には社会保険算定基礎の結果にしたがい、健康保険および厚生年金の等級が変更されます。
いずれも前年と変わらないこともありますが、それを含めて社員一人一人について確認をしておくことが大切です。
給与ソフトは導入するべき
上述した「社員情報の把握」および「年間スケジュールの把握」については、給与ソフトを導入すれば、自動計算してくれる部分がありますので、事務担当者の負担が軽減できるでしょう。
したがって、社員の人数の多寡にかかわらず、給与ソフトは導入するべきだと考えます。
ただし、せっかく給与ソフトを導入しても、メンテナンスが漏れたり、メンテナンスを間違えたりすれば、以降の計算が全て間違ったものになってしまいます。
そこで、第三の要素である多重チェック体制が出てきます。
何ごとにも当てはまることかもしれませんが、一人で作業して、一人でチェックする体制では、間違いに気づかないケースが出てきます。
場合によっては、致命的なミスにつながることも考えられます。
したがって、給与計算を行う際は、作業者と確認者の2名体制を敷くべきです。
手前味噌ではありますが、社内の事務担当者が計算を行い、私のような社会保険労務士がそれをチェックする体制を敷くのがベストパターンだと考えています。
この体制であれば、少なくとも先に挙げた第二の要素「年間スケジュールの把握」は、社会保険労務士に任せられますので、事務担当者の負担は軽くなります。
給与計算を正しく行うために必要な三要素を挙げましたが、最も大切なことは「どこかに間違いがあるはず」という気持ちで計算事務に臨むことです。
特に給与ソフトを導入していると、安心してしまいがちですが、万能なソフトは残念ながらありません。
また、昨今では一つの事業所に正社員、限定正社員、パート、アルバイトおよび契約社員が席を同じくするケースが増えています。
それぞれの社員に対する賃金のルールを規定する必要性が高まっています。
さらに様々な法改正が次々に施行されていきます。
したがって、就業規則および給与規程をしっかり整備して、できる限りシンプルかつ社員が納得するような計算方法を確立することが大切です。
簡単なことではありませんが、これらのルールを確立することは、良い人材の確保につながり、また人材流出の防止にもつながるのです。林田学
最終更新日 2018年6月22日 by tinasdelamp
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